混乱、そして言語の相違についての解説


・バベルの塔の物語は旧約聖書の「創世記」11章にあらわれる。そこで語られるのは下記のような記述である。位置的にはノアの物語のあとでアブラハムの物語の前に置かれている。

「もともと人々は同じ1つの言葉を話していた。シンアルの野に集まった人々は、煉瓦とアスファルトを用いて天まで届く塔をつくってシェム[2]を高く上げ、全地のおもてに散るのを免れようと考えた[3]。神はこの塔を見て、言葉が同じことが原因であると考え、人々に違う言葉を話させるようにした。このため、彼らは混乱し、世界各地へ散っていった」

原初史といわれ、史実性が疑わしいアブラハム以前の創世記の物語の中で、バベルの塔の物語は世界にさまざまな言語が存在する理由を説明するための物語であると考えられている。同時に「石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを」用いたという記述から、古代における技術革新について述べ、人類の科学技術の過信への神の戒めについて語ったという解釈もある。

・「バラル」はヘブライ語の「バビロン」。またアッカド語では「神々の門(バブ・イリ)」を意味する。

・古代バビロンには実際に「ジッグラト」と呼ばれる巨大な塔がそびえていた。古代イスラエル人はこれに対する批判としてこの物語を紡いだと考えられる。絶大な権力と文明を誇るバビロンは、世界の中心として人々を統治するかに見えて、実は「混乱」の源にほかならないと。

・「創世記」には、塔が崩された記述はないため、建設途中で放棄されたものと考えられる。

・建設を指導した「ニムロデ王(絵の下に立つ人物)」は、ノアの息子。

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