神話の暗示 その1

神話伝説と歴史民族は絡み合う綱のようなもので、双方が影響しあって成り立っている。その一例を紹介する。

日本書紀・第五段第十一の一書において、姉神であり日本神話最高神、天照大神から保食神(うけもちのかみ・食物の神)と対面するよう命令を受けた月夜見尊は、言いつけ通り保食神のもとに赴く。
そこで保食神はもてなしとして「口から」飯を出したので、月夜見尊は「けがらわしい」と怒り、保食神を剣で刺し殺してしまう。
保食神の死体からは牛馬や蚕、稲などが生れ、これが穀物の起源となった。
天照大神は月夜見尊の凶行を知って「汝悪しき神なり」と怒り、それ以来、日と月とは一日一夜隔て離れて住むようになったという。
これは二つの寓意を含む神話である。

①殺されて作物を生み出す食物神(大地母神が前身となっている事が多い)と、それを殺す月神(月齢を読み取り、農耕の時期を定める農業神)
 =農業技術の発達による自然の征服過程、すなわち最終主体の生活から農業主体の定住型生活への移行を示す。

②月神の「悪しき行い」と、「それにより月神を嫌う太陽神」
 =日月分離、太陽と月が、共に天にあり輝きながらも交わらない理由付け。

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